高温でのIn-situ観察とハイスループット計測

高温で使用される構造部材がどのように劣化し破壊に至るかを理解することは寿命予測の観点から重要です。CMCをはじめとする複合材料の場合、不均質構造に起因する不均一な変形により局所的な応力集中・ひずみ集中が生じます。それらを理解することは信頼性保証の観点から極めて重要ですが、既存技術では高温で(特に1000℃以上)の材料や部材の変化を捉えることは困難です。

本研究室では、1000℃を超える環境で材料試験を行うだけでなく、いつ、どこで、どのように変化しているかを捉える実験系の確立を目指しています。熱輻射の影響を最小化すると同時に、紫外(UV)光を利用することで変形やクラックなどの損傷がどのように生じているかを三次元、マルチスケールで観察、計測するための技術の開発を目指しています。



デジタルボリュームコーリレーションによる三次元変形分布イメージング

デジタル画像の輝度値分布の移動量から材料表面の変形分布を求めるデジタル画像相関法(Digital Image Correlation)が研究開発の現場で普及しています。井上研究室では近年発達したトモグラフィー技術とボクセルの移動量を追跡するデジタル体積相関(Digital Volume Correlation:DVC)法を利用し、CMC内部に蓄積される損傷を可視化することを試みています。トモグラフィー像はSPring-8及び汎用ラボCTに自作の試験機を組み込み取得しています。(国立研究開発法人 物質材料研究機構との共同研究)



ラボCT及び放射光CTを用いた三次元構造解析

レントゲンやMRIといった検査において、透過像やデジタル画像を再構築した三次元像から情報をいかに抽出するかが重要となっています。機械材料の分野においてもその重要性は日増しに大きくなっています。本研究室では材料や部材に内在するマイクロメートルオーダーの欠陥の可視化、抽出し欠陥の形成メカニズムを明らかにする試みに取り組んでいます。

現在は、セラミックスプロセスにおける焼結現象を理解するために、X線CT装置やSPring-8の放射光設備を利用し、これまで可視化することが難しかった微小な欠陥について解析しています。さらに、デジタル画像から得られた三次元像をモデル化し、応力やひずみの状態をシミュレーションすることを試みています。



研究テーマの例)

1) 高温での二次元・三次元ひずみ分布計測手法の確立と応用

2) トモグラフィーとデジタルボリュームコーリレーションを用いた複合材料内部の損傷の可視化と内部変形のリアルタイム計測

3) 放射光を用いたセラミックス焼結体の三次元構造解析

4) 深層学習を用いたセグメンテーション手法のCMCへの応用

5) CMCの力学応答のバーチャル試験